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氷上の王ジョン・カリーDVD コメンタリー

映画では伝えられなかった情報知識、印象に残ったコメントを箇条書きにしました。情報量すごすぎ。【】内は自分感想です。
めっちゃ長くなったし、未見でネタバレ避けたい人もいるかもなので、畳みますね。

・冒頭、いきなり「こんにちは、町田樹です」【不意打ち】
・ジョニーの滑走シーン、監督は、カリーの演技は過去のものなので現在の観客と繋げるために現役のスケーターの映像を入れたかったそう(田井アナ)
・ジョニーは2022年引退を発表していて、最後のプログラムはブランディ・カーライルのThe Storyに決まっている。
・町田くんが好きなジョニーのプログラムは2008-09シーズンの「ノートルダム・ド・パリ」
・カリーのNYでのホームステイ先だった裕福なナンシー・ストリーターさんはカリーの生涯の友人(田井アナ)【裕福なナンシーさん、スポンサーの一人でもあった?】
・カリーは幼い頃TVでアイスショーを見て憧れてスケートを始めた。1950年代には、1930年から40年にかけて立ち上がったアイスショーのカンパニー、Ice FolliesやIce Capadesがヨーロッパを席巻していた。
・ディック・バトンの現役時代の映像。五輪2連覇ワールド5連覇2Aと3Loを試合で初めて成功させる。引退後はTV業界で活躍。
・カリー18才の頃の演技の映像。キャメルスピンは理想のポジション。フリーレッグが腰より高く上がっているなど。
・カリーの先天的なスタイルの良さは何よりの資本。
・映画全編にわたって紹介されるカリーの書簡について、学術資料として貴重。しかし近年は電子化が進んでメールやSNSでのやり取りだから、現代のスケーターのこうしたやりとりは残ることはないだろう。
・カリーが練習していたロンドンの激混みリンクはリッチモンド・アイスリンク(田井アナ)。屋外のリンクでも練習していた。氷が均質でないし、天候に左右されるから難しい。
・カリーが本格的にバレエのレッスンを始めたのは父が亡くなった後。
・カリー、恋人に「君のスケートは甘すぎる」「男のスケートをしろ」と言われたのは屈辱的だったろうと。【町田くん、男子フィギュアスケート選手に対して向けられる「男らしくない」といった類の言説にはちょっと鋭く反応することが多い気がする。自分自身もそういう体験があるのかもしれない】
・カリーが同じカルメンを滑って比較したドナルド・ジャクソンは初めて3Lzを成功した。
・【すべてのスケオタ憧れの名セリフ「君のスケートのファンなんだ。支援させてくれないか」を放ったスポンサーの】エドウィン・モスラ―はMosler Safe CompanyのCEO。スポーツと学術に対する最も寛大な慈善家と言われた(田井アナ)
・カルロ・ファッシがアメリカに招聘されたのは、サベナ航空墜落事故で壊滅的な打撃を受けたアメリカのフィギュアスケートの再建のため。ペギー・フレミング、ドロシー・ハミルらを育てる。
・コンパルソリーの採点の比重は、1973年にSPが導入されるまでは全体の半分以上あった。
・ドンキはカリーの自コレオだが、マンハッタンからデンバーの機上で出来た。バレエのドン・キホーテの物語は踏襲していない。バレエの表現理論に基づいた美しい体の見せ方とフィギュアスケートの技術との自然な形での融合。
・カリー札幌五輪11位。
・オリンピックは毎試合が高校とか大学受験のようなもの。人生の転機になるくらい重要。
・カリーは芸術面ばかり取り上げられるが、当時もっとも難しいジャンプとされていた3Loも美しく決めている。技術面でも優れていた。
・クランストンやカズンズもフィギュアスケートへの芸術的アプローチを試みている。彼らも映像を収集すれば同じようなドキュメンタリーが作れるのでは。
・シェヘラザードの映像。これも自コレオ。しっとりと踊るカリーにしては珍しく力強いプログラム。
・インスブルック五輪と同年のヨーテボリワールドでも優勝。
・カリーの目標は五輪ではなくアイスショーのカンパニーを立ち上げること。そのためにどうしても五輪金の肩書が欲しかったし、活動の上で味方をした。
・当時のアイスショーはサーカスや曲芸のような趣だった。カリーはそれを刷新して芸術的な舞台を作りたかった。「ドナルド・ダックやバックス・バニーの衣装を着て滑るなんて」という言葉にそれが表れているのでは。
・牧神の午後:相手役キャシー・フォルクスは選手としての実績はないが、表現力を評価されてスカウトされた。バレエ的メソッドに裏付けられた美しい身体表現【個人的にスケーターとしてのフォルクスは好きなタイプ。指先の表現が美しい】振付は映画「ロシュフォールの恋人たち」の振付ノーマン・マーン。ニジンスキーの牧神をフィギュアスケートに翻案。ニジンスキーの牧神は古典バレエを逸脱した斬新なスタイルだが、カリーの牧神は既存のフィギュアスケートを打ち破るような革新、実験的な要素はない。フィギュアスケートで一つのバレエ作品を全て表現すること自体が新機軸と言える。これ以降フィギュアスケートの音楽に牧神がよく使われるようになったが、ネイサン・バーチがネクスト・アイス・エイジで取り組むまでは、ドビュッシーの音楽を全て使ったプログラムはない。牧神の午後の古典的作品と言える。2013年にアダム・リッポンにトム・ディクソンが振り付けているが、カリーからインスパイアされた部分も見られる。
・映画の音楽は再録されたもの、プラチスラバ交響楽団がドナウ川のほとりのスタジオで録音した(田井アナ)。
・「タンゴ・タンゴ」(ストラヴィンスキー/ヤコブ・ゲーゼ):振り付けたピーター・マーティンスはロイヤル・デンマーク・バレエとNYシティバレエのプリンシパルで、引退後はNYシティバレエの芸術監督。カリーに振り付けた時はまだ現役のダンサーだった。相手役のアリシア・ジョジョ・スターバックスは3度の全米(ペア)チャンピオン(田井アナ)。女優気質で役を演じる能力が優れている。振付にペアのデス・スパイラルが組み込まれている。
・カリーのスケーターとしての最大の持ち味は、左右対称に体を動かして踊ることができること。ジャンプもスピンも左右両方に回ることができるので、踊りの動きが多様性を持つ。
・実は左右対称性はバレエ・ダンサーに特有。
・カリーは、アルウィン・エイリー主宰のダンススクールでバレエとモダンダンスを習っていた。
・ファイアーアイランドのターンで登場した友人のウィリアム・ホイットナーはコンテンポラリーダンサー。
・カリーのカンパニーでのギャラの均等分配は、バレエでもスケートでも異例。カリーのカンパニー運営についてもっと詳しく描いて欲しかった。
・生のオーケストラを使用するのもコストが高くなり、カンパニー経営を難しくする。実演芸術の生産コストが嵩む現象を経済学ではボーモルのコスト病という。
・カリーがコラボしたダンス界のビッグネームで映画で取り上げられた以外では、ケネス・マクミラン、ジョン・バトラー、ピーター・ダレルなど。フィギュアスケートにおいてダンス界とこれだけコラボしたのはカリーだけ。
・カンパニーの団員に対して、バレエとその表現理論に基づいたフィギュアスケートのトレーニングメソッドを徹底された。
・代々木のシンフォニーオンアイス:サティの3つのジムノペディを使用したトリオ、3人のスケーターのシンクロナイゼーションとユニークなムーブメント。広告やエキサイティングポイントにナーバスになったカリーに同情。現在でもフィギュアスケートの会場にはセンスの欠片もない広告がある。
・エキサイティングポイントについて:拍手や歓声の度合いによってポイントを出すシステムなのだろうが、アートとしてのフィギュアスケートを追求したカリーには受け入れ難かっただろう。悲劇の表現に対する賞賛は反映できない。フィギュアスケートは興奮だけを伝える身体表現ではない。
・ロイヤルアルバートホール公演:当時はブロードウェイや劇場でのアイスショーは珍しくなかった。今の方が珍しい。しかしロイヤルアルバートホールのような伝統と格式のある劇場での公演は、カリーのカンパニーがスポーツコンテンツではなく身体芸術として社会に認められたということ。アートとしてのフィギュアスケートを体現するカンパニーというカリーの夢がかなった。
・バーン:シンセサイザーアーティストのジャン・ミッシェル・ジャールの音楽を使っている。クラシック以外の音楽からも着想を得ている。ロイヤルアルバートホールはオーバル型の氷なので、回転しながら円を描いたり、フォ―メーションに円形が取り入れられているから、観客からは独自の幾何学的パターンが見えるのではないかと推測します。
・ドロシー・ハミルはメトロポリタン劇場と東京だけのスペシャルゲストだった(田井アナ)
・ウィリアム・テル序曲はカリーの作品としては平凡。
・メト公演成功後の「やめていい?」発言:スケーター本人がここでやめたいと思う時にやめられない不幸。これによってカリーの精神は均衡を失ったのでは。
・チケットは完売しているのに赤字ということは、チケット収入だけではコストがペイしていない。対策としてはスポンサーの獲得とTVの放映権料。ただ放映権ビジネスはこの年開催されたロス五輪から始まったので、打てる手ではなかったか。【カリーのカンパニーの失敗を見ると、やはりKバレエと比較したくなるんだけど、そう言われてみればTBSと提携したりスポンサーの獲得にも意を用いてるよなあと】
・カリーは身体的限界とクリエイティヴィティの限界と闘っていた。
・ムーンスケート:内省的、カリーの人生の内面が投影されている。観客はカリーの内面を覗き込んでいると思っているが、やがて自分自身の内面や人生をそこに反映させてみるようになる。全編見られないのが残念。【見られるよー見たー?】
・カリーは作品に自分の内面を投影されることはほとんどない。体の動きの美しさを見せるような作品作りが多い。
・LGBTQへの偏見について。ソチ五輪直前にもロシアでは同性愛宣伝禁止法が。しかし、運営側はいかなる差別を禁止し、率先して人権擁護に取り組んでいる。
・美しき青きドナウの映像はリハーサル映像。数年氷を離れていたのにも関わらず、カリーはフィジカルを保っている。スケートに対する意欲が戻っていて、かつての仲間から声がかかったのがうれしかったのでは。だからプログラムの名前も「友情」。
・このドキュメンタリーが作られた意義:若い選手でカリーのことを知ってるのはほんの一握り。町田くんもカリーのことをちゃんと知ったのは2012年にミルズ先生に師事してから【ジョン・カリー杯は?】。また芸術としてのフィギュアスケートが進化しているとは言えない状況。映像や書簡でカリーについての記録が残せたのは貴重。ただ、カンパニー経営の問題、作品制作の舞台裏、スケーター育成のカリキュラムはもっと描いて欲しかった。それでもカリーを軸にして1970〜80年代のフィギュアスケート史を立ち上げたのは評価できる。

【スケーターの引き際や身体やクリエイティビティの限界についての辺りには自分自身を重ねている部分もあるのかなあとなかなか刺さるところもあり。カリーの人生と比べると自分はスケーターとしては幸福だったのかもと町田くんが考えられているといいな、】
【町田くんに指摘されて初めて気が付いたんだけど、カリーの演技はとにかく体のラインやムーブメントの美しさを見せることに特化していて、物語を表現したり、思想やメッセージを盛り込んだり、人の心情や自己の内面を投影した作品作りというのは余りしない。そう言えばランビさんもそのタイプに近いかも。体の使い方や動きの美しさを表現することを一番に重視している感じ】
すいか | 町田樹 | 09:25 | comments(0) | - | - | - |
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